2000/04/06 1Mad lovers


「まだ忘れられないの?」
「うん。いろいろ考えたんだけどね。時間かかると思う。」
「ああ、わかった。それ。「俺って誰だっけ?」でしょ。」

そうだ。自分の大半を占めていた「それ」が、ある日急になくなってしまったら、
誰だって自分を見失うだろう。

「少し残酷に分析して言えば、今の君は共有していた時間の使い道に困り、
その空いた時間は、心が痛む時間に当てられているということだ。」
「そう。で、それまでの再利用される記憶のうち、共有されていた記憶について
排除しようとするから、要は記憶セットである僕そのものの一部が失われた
錯覚に陥るんだろう。でも、本当はそうじゃない。そう考えられるようにしている。」
「なんにせよ、人間が自分の記憶を近い記憶から遠い記憶へとシフトするには時間がかかる。
だから努めて、新しい記憶で埋めなければいけない。」

「わかっていたことだ。」
「わかっていたように狂ってるな。」
「ああ、俺たちはずっと前から狂ってるじゃないか。」

記憶セット:理性によってでしか認識できない無形の力(イデー:イデア:アイデア:idea)のアツマリ。
ここでは、色々な記憶とそれによる方向性を持った個人そのもの。



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