2001/03/04 8black hole


今日は友人の運命の日です。

友人は老人に、一人の女性を一生愛し続けるかと問われ、
その質問に首尾良く答えました。「誓います」
女性は同じ質問に同じように答え、とても幸せそうに微笑んでいます。

友人達はじっとそれを見ています。涙ぐむ者もいます。
確かにその時、その場の空気は、感動の渦となっていました。
しかし、僕はその空気に溶け込むチャンスを逃したのか、
一人、とても寂しい気持ちになってしまっていました。
いや、本当は同じような気持ちになっていた者がいたのだと思います。
まるで、足元にとても恐ろしい黒い穴があいているような気分です。

その後、建物を出ると、演出でしょうか、白いハトが一斉に飛び立ちました。
バアアアアアアッ
僕は急に見上げて、眩し過ぎる太陽に目を細めました。

友達は僕に目で合図をしました。僕は笑って答え、
その後打ち合わせていた台詞を淡々と喋ったような気がします。

僕は本当にやるせなくなって、その後別の友人に電話をして会いました。
友人は僕の「黒い穴」の話をとてもよく理解してくれて、
それをきっかけにこの世の核心に迫りたがり、2人、恐ろしげな話をしていました。

少し前から、僕はこのような、僕の範囲や愛や世界の姿を考えるときに、
僕が僕であることに、不自然さを感じるようになりました。
今日の出来事のポイントは、そのどこにも憎しみは無かったはずなのに、
世界はギュッと小さく固定されてしまったことにあるのでしょう。

友達とは夜別れ、その後近くのファミレスで時間をつぶし、
朝方、やっと会社に帰ってきました。
寝ようと、布団に入ると、無音の中、チッ、チッ、という音がしていました。
あんなに色々あったはずの今日は、最後、時計の音だけになってしまったのです。

だから今日は、時計を抱いて寝ました。



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