2004/07/16 | Blackbird | |
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| 今日は小さいお話。
「宇宙が始まる理由。つまり時間が始まる理由。
これはもちろん人の一生と似ているかもしれませんね。
私が生まれて時間を感じ始めたこと。
また、宇宙が終焉を迎えて、この時間の帯が静止することについても、
私にとっての死を考えると、相似のような感覚が生まれますよ。」
「うん。わかる。」
「全く、人間は言葉という制限/ワクグミの中で思考しているなんていい加減なこと、 誰が言ったんでしたっけ。
コトバでは言い表せないことがあって、それが思考に組み込まれることはあります。
雨上がりの午後のあの感覚のように。
人間がスロースピードでそれをコトバに翻訳して、再利用可能にすることを、
思考するということにしているだけですよ。人間は常に先験している。つまり、
雨上がりの午後に散歩したくなる本当の理由。」
「わかる。」
「私の感覚、本当にわかっていますか?」
「わかるさ。コトバがある前は無かったことも知ってる。」
「私の心は深い深い森ですよ?私が複雑な悩みで苦しんでいても、
誰もその苦しみを理解して共有してくれはしない。そればかりか、私は甘えているなどと言われる。
その森に他人が立ち入って、傷ついた小さいツグミを見つけるなど、
本当に難しいことですよ。不可能ですよ。」
「きびしいようだけど、その原因は君にあるよ。
君自身が、自分という心の森から、傷ついたツグミを見つけ出し、コトバにすることがもしできれば、
つまり、君の再利用可能な記憶をもって、ツグミが傷ついた原因を捉えることが出来れば、
それを僕に伝え、そして僕もそのツグミが飛び立つための手伝いをすることが出来るはずだ。
言っておくが、君が見つめるべきことは、森にツグミが歌わないことをではないよ、
ちゃんと傷ついたツグミを見つけ、それが飛びたてる方法を考えるんだ。
僕は君の側にずっといて、それを見つけるための手助けをして、
そして傷ついたツグミのことを、僕に話してくれるのをいつまでも待っているよ。」
「・・・」
「ありがとう。」
「じゃあ今日は、雨上がりの午後に何が隠されているのか、僕らの言葉で見つけてみよう。
出来るだけ分かりやすい言葉を組み合わせて、表現してみよう。」
「ノスタルジックな匂いと優しい日差し。」
「やるなあ。じゃあ」
「静かな街で、湿ったアスファルトがひそひそ話。や、なんか安っぽいな。」
「まあいいや。じゃあこれらを活かして、僕と君のための、新しい言葉を作ろう。」
「「懐古優日」かいこゆうじつ」
「「古静湿日」こせいしつじつ」
「今日は「懐古優日」だね。」
「今日は「古静湿日」だね。」
「どっちがいいかな。」
「「懐古」はもうある言葉だから、「古静湿日」では?」
「じゃあ「古静湿日」に決定しました。どんどんぱふぱふ。」
「じゃあ君の悩みはなんだったの?」
「~~~~~」
「~~~~~」
「分かり合える分かり合えないでなくて、自分自身が自分を分かっているか、
それを伝えたい相手がいるか、それを知りたいと思ってくれる人が
いるかどうかだと思う。そして私は、それを見つけたと思う。」
Blackbird (The Beetles)
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