2008/09/14 13Pelleas et Melisande



今日は、後輩と映画を見ていた。そしてそのあと、おそらく二人で、狂気について話していた。

僕はあるオペラを思い出していた。正確じゃないかもしれないけれど。

「小さい傷だ。本来は、小鳥でも死なないくらいのものだ。
 でも、彼女はその傷で、結局死んでしまった。」

王子ゴローは、森で美しい女性を見つけた。彼女は泣きじゃくっていて、
ゴローがそのわけを聞くと、酷い事をされて逃げてきたのだという。

ゴローが名乗ると、彼女も、自分がメリザンドと言う名前であると答えた。
王子ゴローは、メリザンドを連れて城に戻り、メリザンドと結婚した。

メリザンドは、その後すぐに、ゴローの父親違いの弟であるペレアスに出会う。
二人は気があって、たくさんの手紙をやりとりし、夜明けの洞窟で遊んだりした。

ある日、ペレアスとメリザンドが二人でいるところを、ゴローが見つける。
笑いながら二人をたしなめ、ゴローはペレアスとその場を去る。

ゴローは、ペレアスに、メリザンドが妊娠している事を告げ、
メリザンドを刺激しないようにできるだけ近づかないようにと話す。

ゴローは、自分の息子イニョルドに、
自分が居ない時のペレアスとメリザンドのことを聞き出そうとするが、
あいまいな答えに苛立ち、息子を怯えさせてしまう。

ある夜、メリザンドの部屋の窓に明かりがつくと、ゴローはイニョルドを抱き上げて、部屋を覗かせる。
イニョルドは少しの沈黙のあと、「二人は黙って灯りを見つめています」と答える。

夜の泉にて、ペレアスはメリザンドに愛を告白する。
メリザンドはペレアスに、「嘘はあなたのお兄さんにしかつきません」と話して、笑っている。

しかし、それをゴロー見ており、その場に踏み込んでペレアスを刺す。
メリザンドは、おなかの子をかばいながら逃げる。
ゴローは追って、メリザンドにかすかな傷を負わせる。

メリザンドは、その後危篤状態になり、そのまま子供を生む。
医者は、危篤はゴローによる傷のせいではないと言う。
しかし、命はあとわずかであると告げる。
ゴローは、メリザンドに許しを乞い、そしてペレアスとの仲、特に、過ちがあったかを繰り返し問う。
メリザンドは、過ちは無かったと言い続ける。

老王は、ゴローに、いい加減にするよう諭すが、ゴローはペレアスと再び二人きりで
話をしたいと願う。老王はその願いを退けた。
老王はゴローに、「お前には人の魂が分からないのか」と言った。

メリザンドは、誰にも見取られず、世を去った。

"Sicilienne - Pelleas et Melisande 5" (Faure)

この話を知った時は、
僕はこの物語に善悪を探そうとばかりしていたのを覚えている。
もちろんそれはあるのだろうけれど、それを見つけても、解決には繋がらないだろう。

たくさんの小さな物語は、元々、個の狂気で形成されている
大抵は、それが、たまたま狂っていないように見えているだけだ。

僕達は狂っていたし、そして未だに狂っているのではないか。
しかし、重なり合う狂気の中にこそ、僕はいつも、魂を見つけることが出来る。



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